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  名物教授を頼り、たった3分で決めた職種と会社

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転職するなら早く
駅ホームの陽光の中で突然ひらめいた退社

 デパートの仕事を担当する中で、私は少しずつ自信をつけたが、人並み以上のデザインができるようになれるとは思っていなかった。それに加えて、残業がきつい業界で、さほど楽しくない仕事に自分の時間を奪われるのは、つらいと思うようになったのだ。

 当時、私は半分近くの時間を出向先(池袋)の宣伝課で過ごしていた。通勤時間は池袋まで20分、会社には45分もかかったので、何かと理由をつけて直行や直帰を多くした。また、会社から池袋に行くときは時々、寄り道をして気分転換を図ったりもしていた。

 ある日、池袋の駅近くにあるジャズ喫茶で、1時間ほど大音響を全身に浴びてから宣伝課に入ると、「さっき会社から電話があったよ」と言われて少し焦った。とっさに「ここに来る前に現場を見てきた」と嘘でしのいだが…。クソ真面目のイメージがあった私なので、たぶん疑う者はいなかったと思う。

眠っていた潜在意識が、閃光のように脳を突き抜けた!

 
 そんなある小春日和の朝のことである。山手線高田馬場駅のホームで、池袋方面に向かう電車を待っていると、早稲田通りに柔らかな日が差し、白壁の喫茶店が美しく浮き上がって見えた。まるで時間が止まっているような、不思議な感覚が私を包む。その時、私は自分がこのホームに立っていることの無意味さに気付き、脳内に衝撃を覚えた。

「そうだ! 会社を辞めるのだ」
それまで、「いいアイデアが浮かばない」とか、「残業がきつい」とは思っていても、退社することまでには思い至らなかったことが不思議である。だが、つかの間の自由とまばゆい陽光の中で、私は大学4年時に「卒業制作をしない例外的な道」を選んだ、「本来の自分」を取り戻したのだった。

 それから数日後、部長に辞めたい旨を伝える。部長は慌てた様子で、私を近くの喫茶店に連れてゆき、30分ほどの面談となった。その中で私は、会社自体に不満があるわけでなく、ディスプレイという仕事から離れたいのだということを、素直に説明した。

 当然ながら、「では何をしたいのか」と部長は切り込んでくる。私は「これからのことはまだ決めていません」と答えたが、それは本当のことだった。現代では無謀に思えるかもしれないが、まだ高度成長期にある、売り手市場の時代のことである。貧乏だが、3か月ほどは暮らせる貯金があった。 

仕事⑥ (2021年3月) 

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