編集者になりたい人へ(仕事内容、資質など)
編集者の仕事内容
編集者の仕事をひと言でいえば「本作りの企画から印刷まですべてを行う」ということになります。知的で華やかなイメージのある編集者ですが、仕事の中味は想像以上に地味なものです。斬新な発想や構成力、緻密な管理能力が求められるにもかかわらず、現実は根気と忍耐の日々であるわけです。
編集には単行本、雑誌、新聞などがあり、その発行形式によって仕事のやり方は変わってきます。編集者にあこがれる人の多くは、雑誌の編集ではないでしょうか。自分が親しんだファッション誌やマンガ誌、タウン誌、サッカー・マリンスポーツ・音楽・パソコンなどの趣味誌……。これを自分の手で作れたら最高に幸せでしょうね。
また、単行本の企画も魅力があります。自分が読みたいと思う本を自分が企画する。その道の専門家に会い、趣旨を説明し、執筆を依頼して、原稿をいただく。それが実際に本の形になって書店の棚に並び、多くの読者に読まれるのです。編集者冥利に尽きるといえます。
編集の大半は雑用
でも、水を差すようですが、自分が望む本の仕事ができる人は少数です。出版界で編集の仕事に関われるようになって最初にすることは、“雑用”です。雑用といっても文字通りの雑用から、多少の経験と技術・技能を要求される編集雑務までいろいろです。最初の一年は、給料までもらって勉強させてもらっているのだ、という気持ちで何でも吸収しなければなりません。
私の修行時代
私(当サイト管理人)は24歳の時、ある雑誌出版社に転職したのですが、最初の仕事はさまざまな企業を回って借りた写真を返却することでした(アナログ時代です)。それでも名刺を渡してお礼の挨拶をすれば、相手も一人前に扱ってくれます。忙しいからといって郵送で返却しない意味がそこでわかりました。
次の仕事は校正です。入社前に校正記号は覚えておいたので、難しい作業ではありませんでしたが、これが何時間も続くとかなり神経が疲れます。書いてある内容に気を奪われていると、必ずミスが出ますから、楽しんでいるゆとりもないのです。
誤植は出版社の恥ですから、本当に神経を使う作業です。数人がかりで延べ十数回チェックしても、人間ですからいつかは必ずミスが出ます。でも、世の中には些細なミスでも絶対に許さないという御仁もいらっしゃいます。特に単行本では、編集の仕事の大半が校正だといってもよいくらい。まさに忍耐の時間です。
その出版社は給料が安く、人使いが荒い上に残業代は支払わず、編集部と営業部の仲が悪くてサイテーの会社でしたが、後になって考えると私にとっては最高の環境でした。だって、たった8ヶ月の在籍期間で2年分の経験とノウハウが得られたのですから。
出版社、編集プロダクション、アルバイト、フリー
編集者の所属する会社の形や立場はいろいろです。通常は出版社に就職するわけですが、編集プロダクションに入って編集者になる方法もあります。また、会社に所属しないフリーランスや、ひとまず正社員をあきらめてアルバイトで出版界にすべり込むという方法もあります。
大手出版社
編集者になりたいなら、まず講談社や集英社などの大手出版社を目指すのではないでしょうか。編集者にあこがれる人は多く、企業イメージもよい大手出版社はかなりの難関です。国語力や文章力があるなどということは当たり前のことで、際立った専門知識や特技を持っていることが大事です。しかし、合格者はなぜか一流大学を優秀な成績で卒業した人で多く占められているのが現実です。
なお、晴れて大手出版社に入社できても、編集部門に配属される保証はありません。また、編集部門で雑誌担当になれても、雑誌記者の仕事は編集プロダクションやフリーライターに依頼することが多く、編集管理だけの仕事になることは覚悟しなければなりません。
一般に、組織は大きくなればなるほど給料が高くなる反面、自分のやりたい仕事から遠ざかるものです。生きがいとお金を両立させるのはなかなか難しいということは、何をやるにしても認識しておいたほうがよいでしょう。
中小出版社
そこで、本なら何でもかんでも出版している大手だけでなく、特色ある本作りをしている出版社や、特定の分野に強い中小の出版社も視野に入れたほうがよいかもしれません。一流大学卒でなくても、しっかり能力を見てくれる可能性はあります。その場合でも、自分の得意な分野をしっかりアピールできることは大切です。
なお、小規模な出版社では時間をかけて未経験者を育てていくゆとりがなく、即戦力の経験者しか募集していないところもあります。「未経験可」とあっても、圧倒的に経験者が有利です。
編集プロダクション
出版社への就職が難しい場合、編集プロダクションを選ぶのは賢明な方法です。若いうちに経験者になれば、中途採用のある出版社に横滑りすることができます。また、編集プロダクションのほうが出版社よりもやりがいがあるという側面もあります。
大きな出版社では編集作業を編集プロダクションに外注することが多く、編集者はただの“進行管理人”ということもあります。編集実務自体に生きがいを感じる人にとっては、編プロは居心地のよいところです。ただし、できるだけ人数の多い制作会社を選んでください。創る本の中味が違います。
また、力のある編集プロダクションでは、雑誌を丸がかえしたり、単行本の企画立案まで行なったりするところもあります。今や編プロ企画がヒットを飛ばすことは当たり前のこととなっています。
アルバイト
高卒の人が編集者になりたい場合は、編集者を養成する学校に入って編集プロダクションに入るか、直接アルバイトという形で出版社や編プロに入る方法があります。働きぶりが認められ、編集者が務まりそうと判断されれば正社員になれるわけですが、人物評価が大きく影響するかもしれません。単に人件費を減らすためにアルバイト採用をする会社もありますから、アルバイトから正社員になる道があるかどうかは、あらかじめ確認する必要があります。
フリーランス
フリーへの道はそうたやすいことではありません。十分な経験を積んで仕事ぶりが認められるだけでなく、人脈を築き上げて生かす才覚がなくてはなりません。個人で編集を請け負うといっても、フリーのライターとか、デザイナー、カメラマンなど、いつでも協力してもらえる強力な助っ人が必要なことはいうまでもありません。
編集の仕事を選んだ人の中には、自分が文章を書きたかったという人も少なくないでしょう。昔の作家にはそういう人が数多くいました。編集では、雑誌記者以外は自分でオリジナルの文章を書くことはほとんどなく、人の書いた文章を直す作業に追われます。そこで、フリーになってライターの仕事もしようと考えることは自然です。ただし、フリーになる前に実績を積み、人脈を築くこと。
いずれにしても、フリーランスは会社を設立するのと同じ心構えで計画を立てないと、貧乏生活を味わうことになりかねません。成功のカギを握るのはコネ。これに尽きるといっても言い過ぎではありません。その他、得意なジャンルを持つことも必須条件です。
編集者になるための資質、勉強など
大手出版社に入るために必要なことと、優れた編集者になるために必要なことは少し異なりますが、ここでは後者の資質、勉強法などをお話しましょう。
国語力、特に文章表現力、そして構成力
「とにかく本作りが好きなんだ」というのも一つの資質には違いありませんが、これは主観に過ぎません。当たり前のことですが、第一に国語力があること。特に、文章表現力や読解力、漢字能力は欠かせません。編集では人の書いた文章を直す作業も入りますから、読みやすくてわかりやすい文章が書けるようにしておかなければなりません。また、構成力も重要な能力です。
読書はジャンルを問わず多読をおすすめします。といっても「広く、浅く」を奨励しているわけではありません。とび抜けて得意な分野を持っていないと、ただの優等生になってしまいます。その上で、さまざまなことに好奇心を持つことが肝要なのです。
アイデア発想力と時代感覚、情報収集力
編集者は皆が読みたいと思う本を企画しなければならず、そのためのアイデア発想力や時代を読み解く感受性のあることが重要な資質です。もちろん、これらは心がけとトレーニングによって磨けるものです。また、情報収集力やいろいろな専門分野の知人を持っていることも武器になります。
コミュニケーション能力と人間的魅力
さらに、編集者はコミュニケーション能力があり、人間的にも魅力的であることが求められます。特に原稿の執筆依頼をするときなどは、“先生”からの信頼を得ることが大事です。また、社内外のライター、デザイナー、カメラマン、営業関係者、取材協力者などさまざまな職種の人たちとのコミュニケーションが必要になりますから、仕事の中で人間的に成長していける柔軟性を持っていることが、必要な資質といえるでしょう。
編集者は企画マンであると同時にコーディネーターでもあるわけですから、自然に人が集まってくる魅力があったほうがいい仕事ができるといえます。豊かな発想と、地味で根気の要る編集実務能力に併せて、魅力的なコミュニケーション能力を兼ね備えている、それが編集者の理想です。ちなみに、私はどうかというと、う~ん、どれもそうたいしたことはないような気がします。
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