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  心を動かす手紙の書き方

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心を動かす手紙の書き方

 

「手紙・3つの心得」とは?

 私たちが手紙を書く目的は、お見舞いやお祝い、お礼、お詫び、お断り、相談、依頼、催促、お知らせ、近況報告…などいろいろです。でも、それらは皆、「相手の心を動かす」という共通の目的を持っているといえます。例えば、「私の事情や気持ちを分かってほしい」とか、「私のために力を貸してほしい」「この情報に強い興味を持ってほしい」というようなことです

 どんなに非の打ちどころのない完璧な形式・構成で書かれた手紙でも、本文で述べていることが相手に伝わり、心を動かしてくれなければ、苦労して手紙を書いた意味はありません。心を動かす文章を書くには、それなりのコツがあります。高度な文章技術は一朝一夕には身につきませんが、次に紹介する文章の心得を理解し、実践すれば、見違えるように「相手に伝わる文章」が書けるようになるでしょう。それは、①相手はどういう人か、関係性を意識する、②何をしてほしいのか、目的を意識する、③要点を整理してわかりやすく書く、の3点です。

手紙を読む人はどういう人か(関係性を意識する)

 
 手紙に限らず、文章を書く前に真っ先に考えなければならないのは、読む人はどういう人かということです。個人から個人へのプレイベートな手紙なら、そんなことはわかりきっているわけですが、ビジネス関連の手紙では直接会ったことのない人に宛てることも少なくありません。

 例えば、人事部門担当者とか営業部門担当者、企画部門担当者などです。顔や年齢が分からないだけでなく、どういう考え方をする人なのかもわかりません。しかも、その手紙を読む方は、会社を代表してその窓口となっているわけですから、常にその背後に会社や部門長が控えていることも考えなければなりません。そうした担当者の目線から見た場合、自分が伝えたいことが伝わるのか、しっかりと対応してくれるのかという意識は、文章以前の問題として持っていなければなりません。

 また、プライベートな手紙でも、相手から見た自分の存在というものに思いを馳せないと、独りよがりの文章になりかねません。相手の気持ちを推し量ることによって、思いが伝わる文章が生まれるのです。

多数の人に同時に出す手紙について

 次に、同じ文面の手紙を、多数の人に差し出す場合についても触れておきましょう。例えば、会社の取引先とか、顧客のイベント参加者、趣味の団体の会員、同窓会会員などです。この場合は、差し出す集団(グループ)の最大公約数的な属性をしっかり把握した上で、本文の文章の内容を吟味する必要があります。ただし、受け取る側からすれば「個人」ですから、手紙の文面は「一人ひとりに語りかける」という気持ちを忘れてはなりません。

 そうしたことは、ダイレクトメールにおいては特に重要で、カタログ、パンフレットに添えて送られる「レター」は、代表者名や企画開発部門の責任者名、あるいは商品担当者名など、個人名で送られるものです。コピーライターが書く場合でも、その内容は商品を熟知した一個人が会社を代表して、「その商品に興味を持っているあなたに、特別に宛てたメッセージ」であることを感じさせる文章でなくてはなりません。

何をしてほしいのか(手紙の目的を意識する)

 現代ではケータイやパソコンでのメールが当たり前になっていますから、ビジネス関係や案内状以外の目的で手紙を書くのは、やや改まった印象があり、はっきりとした目的のある場合が多いでしょう。特に、お見舞い、相談、依頼、お詫び、お礼などの場合は、本来なら直接伺うところを手紙で済ますという意味もあります。それだけに、文例集を参考にするなどして、目的意識を持って入念に文案を練らなくてはなりません。

 また、明確な目的がないように見える手紙でも、そのメッセージには何らかの動機があるはずです。例えば、旅先から送る絵葉書の場合は、自分の安否を知らせる、素晴らし風景に感動した気持ちを伝える、出会った興味深い出来事を知らせる、変わらぬ感謝や友情などの気持ちを暗に伝える…などが「目的」になります。

 なお、文章を書き慣れた方や、おしゃべりの得意な方は、ともすると冗漫な文章を書きがちです。要件に入る前に長々と形式的なあいさつや自分の近況が続き、読み手が「この人、いったい何が言いたいの?」と思い始めた頃にようやく用件に入るのでは、焦点がぼけてしまいます。

 「前文」は極力短くして、用件以外にどうしても伝えたいことは、「末文」に手短に添えるほうがよいでしょう。末尾の宛名の後ろに添え書き(追伸)として書くこともできますが、「大事なこと」として強調されますから、やはり焦点がボケないように注意が必要です。

要点を整理してわかりやすく書く

 最後になりましたが、文章の技術的なことを述べます。手紙に限らずほとんどの文章で最も大事なことは、わかりやすく書くということです。わかりづらい文章は読む人の頭を疲れさせます。内容に問題がなくても、信頼性の面でマイナスになる可能性があります。

 読みやすくて頭に入りやすい文章を書くポイントは、大別して2つあります。一つは文章を書く前にあらかじめ要点を整理しておくことです。そして、もう一つは気取らず、背伸びせず、簡潔に書くということです。

①要点の整理の仕方 

 まずは書きたい項目を思いつくままに短い言葉で書き留めます。次に、重複するものを統合したり、重要でないものを削除したりして整理し、文章の流れをイメージします。慣れない人は図式化してみるとよいでしょう。

 手紙の本文に入る用件は、全体を3つの柱で構成するとしっくりくるものです。その前後に導入部と締めくくりが入りますから、5部構成になります。長いものはそれぞれの柱の中でいくつかに分けるようにすれば、基本構成は変わりません。
 文章構成の仕方については本サイト「文章講座2」を参照してください。

 文章が苦手だという人に限って、こうした「文章の設計図」を作らないようです。慣れてくれば、メモがなくても頭の中で組み立てられますが、大事な手紙の場合はやはり、文章の流れをチャート化してから書くことをおすすめします。

②簡潔な文章の書き方

 「文章は簡潔に」とはよく言われることですが、では「簡潔ではない文章」とはどういうものでしょうか。それを知ることが、簡潔な文章を書く第一歩です。次に「書いてはいけない文章」の数々を列挙します。

 書いてはいけない文章

・やたらに難しい漢字や抽象的な熟語が目立つ、背伸びした文章
・長過ぎる主語を持つ文。主語と述語が離れ過ぎている文。主語が不明の文
・長い文で、主語と述語の関係が意味的にすっきりしない文。文法的におかしいねじれ文
・読点がなく、あっても適切でない文
・一つの文に欲張っていろいろな内容の事柄を詰め込み過ぎて、複雑すぎる文
・接続詞の用法(順接・逆説・並列・補足・対比・転換…など)が論理的におかしい文章
・内容的に重複している単語や文節、文が目立つ文章。
・逆に、舌足らずで何を言っているかわからない文
・内容や視点が変わっているのに改行せず、段落がほとんどない文章

 以上の項目は、文章得本をざっと読めばすぐに改善できるものと、それなりにトレーニングしないと身につかないものがありますが、知っておくだけでもかなりプラスになるはずです。なぜなら、書き終わった文章を読み返した時に、判断の基準となる物差しとなるからです。

 手紙やそれに準ずる企画書、報告書、提案書などのビジネス関連文書は、仕事を続けている限り避けられません。文章の構想から構成、表現、推敲、校正に至るまで、一通りの基礎知識を身につけた上で、足りない部分のトレーニングをすることをおすすめします。

文章講座1(わかりやすい文章の基本=悪文を直す)
文章講座2(魅力的な文章の構成・書き出しと推敲のポイント)


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