文章の推敲と完成―実例とコツ(第6章)
〔CONTENTS〕 第6章 文章の推敲と完成 添削・リライト例で見る、文章の問題点発見のコツ 推敲のコツ―自己添削と自己リライトについて |
この章では、いったん書き上げた文章をいかに質の高い文章に完成させていくか、推敲の仕方について解説していきます。
文章上達は、書き上げた後の推敲の時間に比例する!?
文章を書き慣れない方は、書き上げるだけで精いっぱいで、自分の文章を見直すゆとりがないかもしれませんが、最低限、誤字脱字や文法的誤り、読み手がわかりづらいだろうと思われる個所などがないかどうか入念にチェックし、修正することが大切です。
ただし、単に校正・校閲を主眼とした文章の読み直しだけでは、推敲は十分とは言えません。文章は一通り書き終えてからが本番と考えてください。書き出しの1行目とつかみ、全体の構成や読者を引き込む力、流れの自然さ、結びの余韻などを一つひとつチェックし、より魅力的な、真意の伝わる文章に書き直すことが、推敲の目的です。推敲にどれだけ時間をかけるかは、文章上達に直結する大事な作業といえるでしょう。
文章の達人は、恐るべき速さで書き上げてしまいますが、長い文章になればなるほど、その後の推敲に時間をかけます。推敲はある面では、第三者の目で行う作業になりますから、それだけ時間がかかるのです。
準備不足が招く途中での挫折。全体の見直し5つのポイント
推敲はいったん文章を書き上げた後にするものですが、途中で行き詰ってしまって書き直しを決意することもあるでしょう。こうしたケースでは、準備不足が原因であることが多いものです。そこで、挫折した場合は、書き始める前の構想・構成に立ち戻って、次のポイントを考え直してみましょう。
見直し① テーマは魅力的か? 絞り込みが不十分で、散漫になっていないか?
見直し② テーマから逸れた内容(文章素材)を、捨てきれずに盛りこみ過ぎていないか?
見直し③ 全体の構成をしっかりと組み立てた上で書いているか?
見直し④ 書き出しの1行目と最初の段落の内容や表現は、簡潔かつ魅力的か?
見直し⑤ テーマを直接的または間接的に表す、タイトルをつけた上で書いているか?
以上の見直しポイントは、書き上げた後での推敲においても同様です。
なお、見直し⑤について補足しますと、タイトルや小見出しを先につけるのは、テーマを明確に意識し続けるためで、「執筆の羅針盤」ともいうべきものです。うまい言葉がすぐに見つからない場合は、テーマや内容を表わす仮のタイトル(見出し)でもかまいません。正式なタイトルは、書き上げた後でじっくり検討します。
推敲の後にディテールの自己添削。校正は最後に
上記の推敲を行う過程で、パソコンのタイピングミスや変換ミス、言葉の用法の間違いなど、単純なミスに気付けば直しておくことはもちろんですが、筆者の経験では校正のほうにあまり意識を集中しないほうがよいようです。校正は最後にじっくり行うことにして、もっぱら自分なりの文章表現の完成度を高めます。
推敲では、一行目から最後の結びの言葉まで、全体の流れが重要ですが、それと共に個々の文そのものの表現にも神経を使いましょう。ただし、全体の流れに意識を集中すると、部分がおろそかになり、部分の言語表現にこだわり過ぎると、全体の流れに乱れが生じます。推敲は両面から行うのが理想ですが、部分的なチェック(自己添削)は全体の流れがしっかりと定まってからにしたほうが、むだがなく効率的でしょう。
個々の文レベルの推敲(自己添削)については、いくつかのチェックポイント念頭に進めると見落としが少なくなります。この段階に入ったら、全体の流れよりも、一つひとつの文の表現に集中します。具体的なチェックポイントは、本章の2番目のテーマ「推敲のコツ―自己添削と自己リライトについて」にまとめましたので、後でじっくりご覧ください。
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