単調な文章にリズムをつける5つのテクニック
だらだらとしたスピーチは退屈しますね。それと同じように、文章もある程度メリハリをつけないと、単調で読者を飽きさせることになります。リズムのある文章は読みやすくて、読者を引き付ける効果があります。
文章にリズムをつけるには、一般的に次のようなテクニックを用います。どれもそう難しいことではないので、推敲する際のチェック項目として知っておいてください。
①文頭の接続詞や副詞はできるだけ省く
文頭の接続詞や副詞は理屈っぽくてくどい印象を与え、文章が澱みます。逆接の接続詞以外はできるだけ省くと流れがよくなります。
②長い文と短い文を織り交ぜる
長い文が続くと読者は疲れます。短くて簡潔な文を基本にして、時折、長い文をはさむとリズムがよくなります。
③読者に語りかけるか、自問自答する疑問形の文を適度に挿入する
まず疑問を投げかけておいて、その説明をすると、メリハリがつき、読者を引きずりこむ効果が生まれます。また、自問自答の形でも、興味を喚起する効果があります。これも一つのリズムです。
④文末に変化をつける
日本語は動詞や形容詞などで終わる言語なので、文末が単調になりやすくなります。「である。」とか「ました。」などがいくつも続くときは、別の単語で終わるように工夫します。
⑤体言止めの文を挿入する
体言止めとは名詞で終わる文のことで、動詞や形容詞を省略しています。体言止めは、文末に変化をつけるという意味もありますが、それ以上にリズム感あふれる生き生きとした文章にするための技法です。ただし、あまり多用しすぎないこと。
文末に変化をつけると文章が生き生きとする
さて、本論の中心テーマは「文末に変化をつけること」です。どういう意味かわかりづらいと思いますが、まずは単調な文章の例を読んでください。その後に、問題点とリライト例を示します。
中学時代の同級生から突然ハガキが来た。耕太君からのお便りで、内容は演劇の案内だった。 彼とは卒業以来十年以上も会っていなかったので、名前を見た時、とても懐かしかった。私がちょっと好きだった耕太君は、クラスの人気者だった。だから、人を楽しませるのが好きで演劇に興味を持ったのだろうと思った。でも、私は演劇にはまったく興味がないので、見に行くかどうか1週間くらい迷い続けた。昔、好きだった気持ちがいまさらゾンビのように甦ったわけではないが、やっぱり彼のことが気になって仕方がなかった。(以下略) |
一つ一つの文は簡潔で読みやすく、全く問題ありません。特に、一行目の「中学時代の同級生から突然、ハガキが来た」というさりげない幕開けは、これから何が始まるのだろうという期待感を抱かせて効果的です。また、最後の文の「いまさらゾンビのように甦ったわけではないが」の比喩も、月並みな表現ながら、自分自身の恋愛感情を表す言葉としてはおかしみがあります。
でも、この文章にはリズムが感じられません。その原因は、個々の文の末尾の単語を順番に抜き出してみるとわかります。
「来た」「だった」「懐かしかった」「だった」
「思った」「続けた」「なかった」
実に7つの文が連続して「た」で終わっています。しかもみな動詞の過去形です。単調な印象を与えるのはこのせいだったのです。こうした単調さは、内容に関係なく幼稚な印象を与えて損です。
上の文のように過去の話をする場合は、ときどき現在形を織り交ぜるのが効果的です。また文の構造も、推量形や否定形で終わるとか、自分の現在の考えや気持ちを表す形で終わらせると、過去形を避けることができます。ただし、これを書き直すにはそれなりのレトリックが要求されます。
リライト例
中学時代の同級生から突然、ハガキが来た。耕太君からの演劇の案内だった。 彼にはちょっと思いを寄せていたことがあるが、卒業以来、十年以上も会っていない。だから、名前を見た時、とても懐かく思った。彼は人を楽しませるのが好きで、クラスの人気者だったので、演劇をやっている姿は無理なく想像できる。でも、私は演劇にはまったく興味がないので、見に行くかどうか1週間くらい迷い続けた。昔、好きだった気持ちが、いまさらゾンビのように甦るわけではないが、やはり彼のことが気になって仕方がないのだ。 |
リライトをした結果、文の末尾は次のようになりました。
「来た」「だった」「いない」「思った」「できる」
「続けた」「のだ」
これだけでも文章全体のリズムがよくなったように感じませんか? この他に次のような点を直していますので、参考にしてください。
・「耕太君とは何者か」ということが読者の最初の関心事になるはずなので、それをより早く示すために余分な語句を削ったり、文の順番を変えたりした。
・「好きだった」の語句が2箇所に重複して出てくるので、単調さを避けるため、一方を「思いを寄せていた」に変えてみた。
・読点を増やした。