家族としか碁を打たない環境。厚い父(5級)の壁
私の棋力は、お手本となるべき父が5級のヘボ碁で、我が子に碁を教える意欲も能力もなかった。そのため、父との手合いは四子になってから壁にぶつかり、弟がグングン接近してきた。それでも、先に述べた父の虎の巻(置碁の解説書)をこっそり読むなどして、感覚的には進歩していた。あとは実戦の戦いの中で、少しずつ技術や読みの力がついていったのかもしれない。私が将棋の勉強に凝りだす高校3年の夏休み前には、父との手合いは置石が取れ、常先になっていた。しかし、それから先が伸びない。自分よりも二子以上強い相手との対局が皆無となってしまったからだ。
碁は将棋以上に上手との対局数が大事
しかし、碁は将棋以上に実戦の対局数が重要で、視覚的に「碁の感覚」を養うことが上達スピードのカギを握る。また、将棋とは異なり、一度置いた黒白の石は、取られない限りは動くことはないので、正しい石の形を頭に焼き付けることができる。その意味でも、碁は上手とたくさん打って実戦の中で石の形や手筋を吸収することが重要となる。個人的な見解だが、できれば初・中級者(4~10級)なら五子~九子、上級者(1~3級)でも三子~六子くらいのハンデ付きで打ってくれる上手が欲しいところである。
初段が近づいたら、三段以上の人との対局数が上達のカギを握る。また、初・二段の人なら、五段以上の人と碁を打ち、局後の検討をしていただくのが好ましい。局後に並べ直し、碁の考え方を教えるには、それだけの棋力が必要となるのだ。
台湾からの留学生と知り合い、初めて自分の棋力を知るも…
1年生の一般教養課程の体育の授業で、私は台湾からの留学生と知り合った。「碁が5級」というので一度手合わせをしてみると、互先でけっこういい勝負である。「そうか、親父の棋力は5級だったのか…」と妙に納得したことを覚えている。
しかし、私はその頃、碁よりも将棋に熱中しており、それから5年経っても碁はまだ3級だった。13歳から20代半ばまで、最も頭の柔らかい時代に「十余年かけて3級」とは、何と碁才のないことか…。でも、のちに私は、上達にとって大事なのは「才能」ではなく、「環境」であることを思い知らされるのである。
囲碁②(2021年2月)
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