歩三兵を卒業、将棋の形になるまで
(教えてくれない祖父)
自信を持った私は、祖父に将棋を教わることになった。すると、祖父は王様以外の駒を並べず、歩三枚を手元に置いた。歩三兵(ふさんびょう)という独特の手合いで、上手だけに二歩が許されるルールである。
祖父は初手を角の頭に☖8六歩と打った。私が喜んで同歩と歩を取ると、祖父は嬉しそうに☗8七歩と打つ。気が付くと角が逃げられない(右図)。こんなに早く角を取られては、指し続ける気力を失う。完敗である。
歩を取ってはいけないことを知った私は2局目、☖8六歩に☗7六歩と角の逃げ道を開ける。以下、☖8七歩成、☗3三角成、☖4二王(右下図)…と続き、馬で祖父の王を追いかけるうちに、左下隅に逃げられて入玉されてしまった。
ここまでの手順はベストでないものの、上手の王が逃げようとする方向に馬を引いて、飛車を活用することを考えれば勝てるはずである。しかし、そんなことはなかなか教えてくれない。
そういえば小学校に上がる前に、祖父は変わった算数の足し算問題を出して、私を鍛えてくれた。その問題は、「牛が1頭、鶏が3羽で、頭と足は合わせていくつになる?」というものである。正解が出るまで絶対に答えは教えてくれず、できると少しずつ難しい問題になっていく。初めのうちは答えが10以下の問題が出され、次の段階で11~20、そして最終段階では20を超えた。両手両足を使っても間に合わない問題である。
将棋に関してもそのような教育方針があったのか? それは不明だが、すぐに答えを教えず自分の力で発見させる方法は、時間がかかるようでも優れた教育法の一つかもしれない。
将棋➀(2021年1月)
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