文章上達のツボ~わかりやすい文章(HOME) 文章上達法ブログ/エッセイ●囲碁・将棋
  練馬の将棋道場でやっと初段。忘れられない一局

文章講座1
悪文の直し方
文章講座2
構成・書き出し~推敲 
文章いろいろ
作文・仕事・自分史… 
エッセイ
猫・写真・囲碁将棋… 
①文の構造 ②読みやすさ ③テーマと準備 ④構成/構想 ⑤書き出し ⑥推敲 ⑦共感/リズム 

練馬の将棋道場でやっと初段
忘れられない一局

 大学に入学して将棋部に入ったものの、あまり熱心に将棋を指すことはなく、2年生以降は将棋部に顔を出すことはほとんどなくなった。他のことに熱中していたこともあるが、後から入ってきた1年生の数名が私と同等以上の棋力だったことも、潜在的に大きな要因だったかもしれない。

 卒業後、私は25歳になる前に2回も転職した。最初の会社では昼休みに碁や将棋を楽しむ相手がいたが、ほとんどが私以上にヘボ碁・ヘボ碁将棋だった。それでも、当時の棋力はどちらも「3級程度」はあったと思われる。

 25歳で結婚し、東京都豊島区に住むようになった頃、私は練馬に将棋道場があるのを知った。勇気を振り絞って暖簾をくぐってみると、張り詰めた空気の中にも、庶民的な雰囲気が漂っていた。私の棋力が「3級」で通用するかどうか心配だったが、何とか勝ち越すことができ、胸をなでおろしたことを覚えている。何度か通っているうちに2級に昇格。俄然、将棋をやる気になってきた。

「飛車香落ち戦」で、定跡通り上手陣を破って負けたこと

 その道場で1級に昇格した頃のことである。通常はあまり棋力の離れた人との対戦は組まれないのだが、その日は段級の接近した人がいなかったため、練習試合として飛車香落ちの将棋を指すことになった。もちろん私が下手である。

 幸いにも、私は飛車香落ちの駒組を覚えていた。とはいえ、形だけ覚えていても、たった1回の手順前後で、定跡とは違う形にされてしまうことは多々ある。慎重に進め、右四間飛車から4筋の歩を突いて、仕掛けの場面となった。

 「さあ、どうだ!」と言いたいところだが、妙な胸騒ぎがする。上手氏は私の父くらいの年齢で、悠然と長考に入った。しかし、一方では隣の常連さんと雑談を始めたりもする。「もしかして、私の手番ではないか…」と錯覚するような光景で、根拠のない不安感に襲われた。

 ようやく指された手は定跡通りの手順で、私の角が敵陣に成り込み、「下手よし」のはずだった。しかし、それから数手後、どう考えても私が優勢のはずだが、決め手がなかなか見つからない。じわじわと差が縮まり、とうとう私は負かされてしまったのだ。高段者恐るべし、である。

将棋から囲碁へ!

 私の道場通いは、初段に昇格するまで続いた。そして、「初段」で指すようになってから間もなく、練馬には行かなくなった。将棋の目標を達成し、拍子抜けしたのかもしれないが、実はその頃、3級の棋力になっていた囲碁が、俄然面白くなってきたのだ。2度目の転職先が囲碁環境の良い職場だったことが、私の人生に大きな恩恵をもたらすことになる。
                      将棋⑥(2021年9月) 
 HOME  TOP   テーマ別・タイトル一覧