練馬の将棋道場でやっと初段
忘れられない一局
卒業後、私は25歳になる前に2回も転職した。最初の会社では昼休みに碁や将棋を楽しむ相手がいたが、ほとんどが私以上にヘボ碁・ヘボ碁将棋だった。それでも、当時の棋力はどちらも「3級程度」はあったと思われる。
25歳で結婚し、東京都豊島区に住むようになった頃、私は練馬に将棋道場があるのを知った。勇気を振り絞って暖簾をくぐってみると、張り詰めた空気の中にも、庶民的な雰囲気が漂っていた。私の棋力が「3級」で通用するかどうか心配だったが、何とか勝ち越すことができ、胸をなでおろしたことを覚えている。何度か通っているうちに2級に昇格。俄然、将棋をやる気になってきた。
「飛車香落ち戦」で、定跡通り上手陣を破って負けたこと
幸いにも、私は飛車香落ちの駒組を覚えていた。とはいえ、形だけ覚えていても、たった1回の手順前後で、定跡とは違う形にされてしまうことは多々ある。慎重に進め、右四間飛車から4筋の歩を突いて、仕掛けの場面となった。
「さあ、どうだ!」と言いたいところだが、妙な胸騒ぎがする。上手氏は私の父くらいの年齢で、悠然と長考に入った。しかし、一方では隣の常連さんと雑談を始めたりもする。「もしかして、私の手番ではないか…」と錯覚するような光景で、根拠のない不安感に襲われた。
ようやく指された手は定跡通りの手順で、私の角が敵陣に成り込み、「下手よし」のはずだった。しかし、それから数手後、どう考えても私が優勢のはずだが、決め手がなかなか見つからない。じわじわと差が縮まり、とうとう私は負かされてしまったのだ。高段者恐るべし、である。
将棋から囲碁へ!
私の道場通いは、初段に昇格するまで続いた。そして、「初段」で指すようになってから間もなく、練馬には行かなくなった。将棋の目標を達成し、拍子抜けしたのかもしれないが、実はその頃、3級の棋力になっていた囲碁が、俄然面白くなってきたのだ。2度目の転職先が囲碁環境の良い職場だったことが、私の人生に大きな恩恵をもたらすことになる。将棋⑥(2021年9月)
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