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主語の省略と偽物の主語

 
 主語は「~は」「~が」に当たる文節のことで、文の主体を表します。述語は文の主体が「~である(ない)」「どうした」「どんなだ」というような、事実や動作、意見などを表すものです。主語と述語は必ずセットになっています。

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 主語で気をつけなければならないのは、「は」がついていても主語ではない場合があるということです。また、主語が省略されることも日本語には多く、時には偽物の主語がつく場合もあります。
 たとえば次のような文章がその例です。

 ①キンギョソウは、切り取った茎からまた茎が伸びる。
 ②失敗は恐れてはならない。
 ③国の交戦権はこれを認めない。


 ①の「キンギョソウは」が主語ではないのは、あとに「茎が」があるのでわかりやすいでしょう。茎が伸びるのであって、キンギョソウが伸びるのではありません。
 ②の「失敗は」も主語を表す「は」ではありません。「失敗を」とするところが、強調のために「は」になったのです。隠れた主語はもちろん、「私たちは」あるいは「君たちは」などです。
 ③も「交戦権は」を主語と考えたら意味が通らなくなります。この場合の「は」は場を表す用法で、「交戦権については」という意味になります。隠れた主語は「国民は」「我々は」「日本国憲法は」などです。

それでも「偽物の主語」を使う理由

 ③のように、主語と紛らわしい「は」の使用はできれば避けたいのですが、①②の例の場合は「偽物の主語」を使わないと、かえってしっくりしません。試しに書き換えてみましょうか。

①キンギョソウにおいては、切り取った茎からまた茎が伸びる。
②失敗恐れてはならない


 ①は理屈っぽくて、もたついた文になっていますし、②は「失敗」があまり強調されていないことがお分かりでしょう。

 このように、「は」には主語を表わす以外にいくつかの用法があり、それだけでもややこしいのですが、主語を省略しても意味が通じることがあるばかりか、むしろ省略したほうがすっきりすることさえあります。「日本語は難しい」といわれるゆえんです。これは日本語の文法的構造にも原因がありそうですが、「言わずもがな」のことは言わない、日本人の察する文化が根底にありそうです。

 しかし、文章に関してはその場の空気や阿吽(あうん)の呼吸といったものをあてにするのは考えもので、意味にいくつかの解釈ができる文とか、読者の読解力を要求する文は避けたいものです。


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