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段落・改行は長すぎず、短すぎず、適切に

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段落・改行は長すぎず、短すぎず、適切に

 

読者の理解を助ける段落

 時折、段落がほとんどない文章を見かけます。延々と原稿用紙2枚くらいにわたって改行されない。そんな文章には、どこが内容の切れ目なのかを判断するのに苦労させられます。

 特殊な表現意図で書かれた小説ならいざ知らず、エッセイや小論文では数行から十数行程度で、話題や場面、論点などの転換があるはずです。改行は、「これまで話してきたこととは少し違う内容になりますよ」という合図に相当します。それがないと読者は、「まだ同じ話がずっと続くんだなあ」と判断することになります。

 文章というものは同じ話を延々と続けられるものではありません。少しずつ扱う素材や見る角度、掘り下げ方などが変わってきて、さまざまな風景を見せながらゴールに向かっていくものです。だれもが無意識にそうした文章を書いているはずです。

 「同じ風景だと思って眺めていたら、いつのまにか違う風景になっていた」

 段落のない文章は、読み手にそんな思いを抱かせてしまうのです。そればかりか、意地の悪い人は、書き手のことを「整理能力がない人」、「脳があまりクリアではない人」と思ってしまうかもしれません。たかが文章表記上の一作法にすぎないことを怠ったために、そこまで思われてはかないませんね。

 段落は読者の理解を助けるために設けるものです。その意味では読点と同じ役割を果たします。読点が文の理解を助けるのに対して、段落は文章の展開に対する理解を助けているわけです。逆に書く側から見れば、段落を打つことによって、自分の文章の流れを大まかにつかめるという副産物もあります。

段落の多すぎる文章はどうか

 

 先ほどとは逆のケースもあります。有名人が雑誌に寄せたエッセイ風の読み物の中に、一行ごとに改行する文章を何度か見かけました。

 文を書くことを生業としていない有名人が文章を書く場合、ほとんどは編集者が全面的に書き直すか、あるいはゴーストライターといわれる人が取材をして代わりに書くのが、出版業界の常識です。でも、たまには文章に自信があって、どうしても自分で書きたいという方もいらっしゃいます。

 そうした方の文章は、ゴーストライターには出せない味があってとても新鮮に映ります。しかし残念なことに、一行ごとに改行された文に出合うと、せっかくの味がもったいないなあ、と思います。エッセイは、「つれづれなるままに心に浮かんだことを書けばよい」とはいうものの、改行が多すぎると全体が散漫になって、興味が持続しません。

 むやみに改行する文章は、段落のない文章と同様に、内容の切れ目がわかりづらくなります。「メリハリがなく、不親切な文章」といえるでしょう。

段落を作る上でのチェック・ポイント

 
 すでに述べたように、段落は大きな意味の切れ目を表しています。前の段落と何らかの関係を持ちながらも、独立した一つの世界を形成しているといってよいでしょう。したがって、その中の文はすべて、段落が表すテーマや考え方に沿ったものでなければなりません。段落の趣旨と無関係の文が入ると不協和音が生じ、論理の流れが乱れてしまいます

 段落の内容が統一されているかどうかをチェックするには、段落ごとに短いタイトルを考えてみるとよいでしょう。段落のタイトルに対して違和感のある文は、邪魔になるので削除します。もしも、その文が気に入っていて、どうしても捨てがたいときは、あとの文章に生かす工夫をします。

 段落は一つの文だけで構成されることもあります。文が長くなると、そういうことも往々にして生じます。

 またそれとは別に、前後の段落のつながりを滑らかにするために、文全体に接続詞的な役割を持たせて挿入される段落もあります。たとえば次のような使い方です。

 それでは次に、それぞれのケースについてどんな問題点があるかを述べることにする。
 最初の事例では、……

 ただし、一つの文だけの段落はいわば例外で、たいていは複数の文で構成されています。その場合、最初の文は大事です。段落の第一行目は、段落全体のテーマを開示したり、段落の結論を先に述べたりする役割を果たすものです。段落のタイトルをつけるような気持ちで書きます。読み手の側から見れば、突然、場面転換が図られるわけですから、一行目は簡潔でわかりやすい表現を心がけます。あまり長すぎない文が望ましいでしょう。

 ところで、すべての改行が段落の切れ目というわけではありません。たとえば、かぎ括弧でくくられた会話文は、段落でなくてもその都度改行します。また、箇条書きや引用文なども行を改めますが、時にはそれが段落の中に置かれることもあります。

段落を表す表記について

 なお、ウェブ上の文章は、書籍や雑誌、新聞に比べて視覚的に読みづらく、目も疲れやすいので、段落を多く分ける傾向があります。人によっては、1行ごとに段落をつけたりもします。レイアウトの面でも、段落ごとに1行空けるなど、見た目にも段落がひと目でわかるような工夫をするのがネットの文章の特徴です。

 ただし、ウェブ上の文章表記は歴史が浅いため、出版界のような「統一された暗黙のルール」が存在するわけではなく、「基準」はたくさんあるようです。例えば、段落が変わる一行目は一文字分の空白を入れるのが出版界の常識ですが、ウェブでは空白を入れないほうが主流です。見た目重視なのですね。出版物でも、写真などのグラフィックな要素を重視する雑誌では、頭をそろえるレイアウトが見られます。「読みやすさ」を二の次にされた執筆者には、少し気の毒な感じもしますが……。

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