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エッセイ・随筆・小論文―違いと共通点

エッセイと随筆は同じもの?

 エッセイは随筆と訳されますが、両者にはニュアンスの違いが多少あります。

 随筆は、思いつくままに自由な形式で書いた散文のことで、日本では文学の一形式として昔から親しまれてきました。歴史に残る最古の随筆は、十世紀末に書かれた清少納言の「枕草子」だとされています。清少納言は、独特の鋭い観察眼と、女性らしい細やかさで貴族の日常生活を綴っています。またその後も随筆文学は、鴨長明「方丈記」、吉田兼好「徒然草」、本居宣長「玉勝間」、松平定信「花月双紙」などの傑作が連綿と続いています。

 その中でも徒然草の冒頭、「つれづれなるままに、日ぐらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば…」はあまりに有名で、このままで「随筆」の定義になっています。

 エッセイのほうはどうかというと、十六世紀に出版されたモンテーニュの著書「随想録」を起源とするのが定説で、フランス語のエセイユ(試みる)の名詞形「エセー」に由来します。当時、文芸のジャンルにエッセイに類するものはなく、モンテーニュが初めて、「主観的で私的な事物の考察と、内面の探求」を書く試みをしたとされます。

 起源だけでみると「エッセイは随筆と同じじゃないか」ということになりますが、ヨーロッパには「エッセイ」という文学ジャンルはありません。本家のフランスではその後、「エッセイ」があまり発達しなかったのです。

 随筆とエッセイのもう一つの違いは、エッセイが随筆に比べて論文に近いニュアンスがあることです。そのことは、アメリカに渡って発展した「エッセイ」に如実に表れています。アメリカでは、学校教育で「エッセイ」の書き方をしっかりと学びますが、これは日本でいうエッセイでもなければ、いわゆる作文でもありません。ここではエッセイは、自分の意見を発表するための文章で、日本の小論文に相当するものです。

 日本のエッセイでは、自分自身の体験と情趣豊かな表現が大切になりますが、アメリカでは相手を説得し、納得させるものでなくてはなりません。当然ながら、両者はテーマ選びから展開法、表現に至るまで異なってきます。このように同じエッセイという言葉でも、内容はいろいろです。

 最後にエッセイの意味を整理しておきましょう。エッセイは、狭義には「随筆」「散文」「随想」「感想文」などを指しますが、広義では「小論文」「試論」「評論」などを含んだ概念となります。本講座では便宜上、狭い意味に近い感覚でエッセイという言葉を使っています。

エッセイと小論文

 
 エッセイと小論文を対立させて書きましたが、先に述べたように、もともとはどちらも広義での「エッセイ」の中に含まれるものです。文章の書き方が根本から異なるものではありません。
 次に、狭義でのエッセイと小論文との共通点と相違点をまとめてみましょう。

●エッセイと小論文の共通点


 まず文章の長さですが、おおむね四百字から二千字の間で書かれます。それ以上長くなる場合は、小見出しがいくつかつけられて、別の文章の扱いになります。

 全体の文章構成も、テーマや目的の如何に関わらず共通したものがあります。主な構成パターンとしては、起承転結、三部構成、序破急などがあります。

 どちらも、文章のわかりやすさや、文と文との意味的なつながりが大切です。そのほか、文章一般に通じる技術はすべてエッセイ・小論文にそのまま当てはまります。

 最後に見逃してならないのは、どちらも一般的な知識や考え方、定説などを書くのではなく、書き手自身の個人的な知識、体験、感情、思想などを書かなければならないことです。小論文といえども、自分の考えを述べず、単に本を要約したものは、論文とはみなされません。オリジナリティがあること。これがエッセイと小論文に共通の重要なポイントです。

●エッセイと小論文の相違点


 エッセイと小論文のいちばんの違いは、一般論ではなく個人的なことを書かなければならない、その中身にあります。

 エッセイでは自分のユニークな体験を題材にして、きわめて私的な生活描写の中から自分自身の感情や思想を紡ぎ出し、読み手の共感を得ようとします。体験そのものが魅力的で、読み手の好奇心をくすぐることができれば理想的です。

 一方、小論文では同じ個人的なことでも、物事に対するとらえ方や分析法、およびそこから導き出される問題点とその解決法、将来の展望などが自分自身の視点と考え方によって表現されなければならない点です。その際、個人的な体験を織り込んだほうが説得力があることは、エッセイと同じですが、その体験はあくまで論理の補強のために挿入する点が異なります。

 エッセイと小論文はその目的が異なるために、同じ形式の文章構成でも、その運用法が変わってきます。たとえば、エッセイでは起承転結や三部構成において、最初にテーマの提示が行われます。時には興味深いエピソードから始まり、ぼんやりとテーマをにじませるというような手法もあります。しかし、小論文ではそのような遠回りはしません。単刀直入に結論を述べるのがよいとされています。

 文章は「最も話したいことから述べる」のが原則です。小論文ではまさに「そのものずばり」でよいのですが、エッセイではいちばん言いたいことがはっきりせず、時としてぼけることがあります。テーマを提示しながらも、含みを持たせる。そんな芸当がエッセイの冒頭には求められるのです。その後の流れも、エッセイが情趣を重んじながら展開するのに対して、小論文は論理の筋道をしっかりとさせて歩んでいくという大きな違いがあります。


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