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第4章 構想と構成法 起承転結は文章に向いてない…その理由とは

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起承転結は文章に向いてない…その理由とは

 

 一つ一つの文はしっかりしているのに、全体的にまとまりがつかなかったり、冗漫で退屈な文章になったりする方は少なくありません。原因の多くは、全体の構成がしっかりしてないためです。

 文章の構成といえば、だれもが真っ先に思い浮かべるのが起承転結です。このほかにもさまざまな文章構成法があるのですが、文章には起承転結がなければならないと思い込んでいる人もかなりいます。でも、起承転結の本来の意味を考えると、ある程度長い文章の構成としては、ほとんど役に立ちません。

 起承転結はもともと四行詩の傑作ともいうべき形式で、それが比喩的に「文章構成」の意味で使われるようになったのです。起承転結の説明としてよく引き合いに出されるのが、頼山陽の俗謡です。

 ……京の五条の糸屋の娘
 ……姉は十六妹十四
 ……諸国大名は弓矢で殺す         
 ……糸屋の娘は目で殺す

 このほか、「春眠暁を覚えず…」で有名な孟浩然の漢詩「春暁」も、みごとな起承転結になっています。起承転結は、四行詩の形式としては完璧なものといえるでしょう。

 これを長い文章に援用する場合、各パートは次のようになります。

起……テーマや目的、事実を提示する。
 物語においては、主な登場人物や舞台となる場の説明などの導入部。

承……「起」を受けて、それを発展させる。
 物語では核心部分につなぐ役割を果たすが、大きな進展はない。

転……変化をつけて、別のことを展開する。
 物語では物語の大きなヤマ場。最も盛り上がる部分。あるいは転機。

結……結論ないし結末を述べ、余韻を残す。
 物語では、最後の結末を示して締めくくる。 オチに相当する部分。

物語やエッセイでは、起承転結は不自由

 なかなかうまくできているように思えますが、実際にこの形式に従って忠実に文章を書こうとすると、かなり苦労します。要素が四種類に限定され、しかも流れが固定されているので、文章が長くなればなるほど、起承転結は不自由になるのです。

 たとえば、物語の場合、二番目の「承」が長すぎると飽きられてしまいます。また、クライマックスの「転」が一回だけなのも不自由です。少なくとも「起承転転転結」くらいの形をとらないと、ストーリーが平板になります。

 随筆に近い意味でのエッセイにおいても、同じことがいえます。内容をわずか四つのパートで構成し、三番目に変化をもたらせて、最後にオチをつけるという形式は、かなり短い文章でないと成り立ちません。特に「転」の位置が限定されていることが致命的な欠陥です。

 随筆や散文を起承転結の形式で書こうとするなら、四つの段落で収まる200字~400字くらいが適量でしょう。

小論文を起承転結で書くのは無理

 
 次に小論文と起承転結の関係も述べておきましょう。結論からいえば、小論文に起承転結を採用するのは不可能に近いといえます。それは、小論文が「結論から書く」ことをセオリーとしているからです。

 もちろん、小論文においても形式的な「起」の部分はありますが、それはほとんど「あいさつ」ないし「枕詞」に近く、すぐに結論が述べられるのがふつうです。ある程度の分量を持って独立した導入部は、小論文には不要なのです。

 さらに「承」に当たる部分は、論文の中核となる本論になります。結論を検証し、読者を納得させる部分です。「転」は不要で、必要に応じて本論の中にいくつか差し挟みます。論文を無理やり起承転結で書いたとしても、もはやそれは論文とは呼べないものになるでしょう。

 結論として、起承転結は「短い文章の構成法としては、使い方によってはうまく収まる構造を持っている」ということができます。

 しかし、おすすめするのは本章で解説している二部構成三部構成四部構成五部構成(三部構成の発展形)です。構成法は文章の目的や長さやによって異なりますし、三部構成と四部構成については展開法の異なる複数の構成法があります。
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