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文章講座25章 文章の書き出し > 冒頭のつかみとテーマの提示

冒頭のつかみとテーマの提示

つかみとは、1行目と本論をつなぐ接着剤
読者の「知りたい気持ち」に寄り添いつつ、テーマを提示する

 スピーチなどでは冒頭での「つかみ」が非常に重要になります。落語ではこの部分を「」と呼びますが、本題に入る前に聴衆を自分の世界に引きずり込めるかどうかは、その人の芸の力量にかかっています。文章も同様で、冒頭でもたついていると読者を苛立たせるばかりか、しっかり読んでくれない恐れがあります。

 前々ページから「書き出し、1行目の書き方」と「エッセイの書き出し」について解説しましたが、これを生かすも殺すも、次に続くつかみの部分にかかっているのです。つかみは、読み手の興味を持続させながら、本題にスムーズに移行させる接着剤といってもよいでしょう。

 エッセイなどの導入部では、早めにテーマを提示するのがセオリーとなっていますが、唐突にテーマを述べるのでは魅力的な文章になりません。最初の短い文を受けて、それを「読者の知りたい気持ち」に寄り添いながら、展開していくことが肝要です。とかく自分の言いたいことを真っ先に書きがちですが、そうしたはやる気持ちを抑えて、読み手の興味がどこに向くのかに思いを馳せましょう。

 それでは、抽象的なお話はここまでにして、次に実例に沿って解説していきます。

実例:エッセイの冒頭―問題点とリライト例

 次の文章は、「学生時代に何を学んだか」をテーマにしたエッセイの冒頭です。個々の文にさほど大きな問題はありませんが、幾分もたついた感じがします。問題点を考えてみてください。

 家があまり裕福ではなく、海外に行ける環境にはなかったが、国際色豊かな港町神戸で生まれ育って、幼少の頃からいつかは海外に行くのだ、といつも考えてきた。そして、大学では海外に関わりのある勉強がしたい、と漠然とではあるがいつも考えていた。英語の学習を続けながらも、何か第三外国語を習得したいと思って入学したタイ語教室によって、私の大学での生活は大きく変わった。 〔原文〕

〔問題点〕

①書き出しの文は、内容を詰め込み過ぎたため、長すぎて重くなっています。
②しかも、いきなり理由から述べており、内容もテーマに直結していません。もたついた感じがするのは、単刀直入ではなく回り道をしているためです。
③段落の最後で一応、テーマの提示がありますが、そこに至る文が「つかみ」となっていないため、損をしています。文章の流れや表現に工夫が必要です。

 次にリライトの一例を示します。

 幼少の頃から私は、いつか海外に行くと心に決めていた。大学に入ってからもその気持ちが変わらなかったのは、港町神戸で育ったせいかかもしれない。英語を学習する傍ら、漠然と第三外国語を習得したいと考えていた。そんなある日、街でふと見かけたタイ語教室の看板が、私の大学生活を大きく変えることになった。  〔添削・リライト例〕

 じっくり読み比べれば違いが分かると思いますが、若干の解説を加えます。まず、原文の「家があまり裕福ではなく、海外に行ける環境にはなかったが」は、なくてもよいどころか、これがあるために「タイ語を学んだ」というテーマの提示がややぼやけています。

 また、それに続く「国際色豊かな港町神戸で生まれ育って」の部分も、「海外に行く」という強い気持ちになった理由を先に述べているわけですから、読者の興味を引くには遠回りしています。「港町神戸」への思いが強く出過ぎているのかもしれませんね。そこで出だしの文は次のようにシンプルな表現にしてみました。

 幼少の頃から私は、いつか海外に行くと心に決めていた。

 次に、段落の最後、「テーマの提示」の部分を比較してみましょう。

 何か第三外国語を習得したいと思って入学したタイ語教室によって、私の大学での生活は大きく変わった。 (原文)

 そんなある日、街でふと見かけたタイ語教室の看板が、私の大学生活を大きく変えることになった。 (リライト文)

 

 アンダーラインの箇所に注目してください。「そんなある日」は、出来事をほんの少しドラマチックに演出しています。そして、主語を「タイ語教室の看板」とすることによって、「私の気持ち」から離れた客観的事象のスタンスをとり、これから物語が始まることを強調しています。最後の「変えることになった」は、「どう変わったのか?」という謎を読み手に投げかけています。

 こうして文章を分析してみると、かなり理屈っぽい印象を受けると思いますが、実際の作業は理詰めで考えるわけではなく、文章の流れが自然に頭の中に浮かんでくるものです。湧き出るような自然な思考の流れが、読みやすい文章を生むといってよいでしょう。つかみとは、「その先が知りたい」という読者の自然な気持ちの流れに寄り添うことなのです。


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