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  中1の夏。元番長との将棋「鹿野山の対決」

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中1の夏。元番長との将棋「鹿野山の対決」

 私の生まれた町は田舎だったので、小学校のメンバーがほぼそのまま同じ中学校に進んだ。そして、気がつくと新しいクラスで、私は将棋が一番強いことになっていた。

 忘れられないのは、夏休みの鹿野山(千葉県)の合宿での出来事である。2クラス合同の合宿で、3分の1ほどの男女が参加した。地元の中学生とソフトボールをしたり、飯盒で自炊をしたり…と、楽しい思い出がいろいろあったが、その中で忘れられない出来事が「元番長」との将棋対決である。

 小学校時代、1クラスの男子を完全に支配下に置き、他の3クラスの男子にも影響力を持つ札付きの番長がいた。中学進学に際して、小中の先生方が合同で対策を練り、番長の側近数名を全て他のクラスに分散した。しかも、クラスの担任は背が高くて声も大きく、常に毅然とした態度の先生である。そのおかげで、番長の影響力は急速に弱体化したのだが…。それでもまだ、多くの男子生徒は彼と関わるのを恐れていた。

 そんな状況下で、2日目の昼休みに突然、元番長に「将棋をやろう」と呼び止められたのである。本当は他の人と一緒に外に出たかったのだが、断ることができない。

 1局目は緊張しながらも楽勝だった。睨みつけられるかと思ったが、「番長」はしきりに悔しがる。しかし、実力の差は歴然なのに、なぜそんなに悔しがるのか…。当惑している私に、「もう一番!」の声。従わざるを得なかったが、対局が始まると雑念が消えるので、「負けてやろう」などという気持ちは微塵も沸かず、2局目も完勝した。さすがに彼はもう悔しがらなくなった。
 みんな外に出てしまっていて、この「鹿野山の対決」について知らなかったことは、お互いにとって幸いだった。以来、小学時代はあんなに恐れていた番長が、「ただの中学生」になっていたことを実感し、私の心の奥底の不安が一つ消えた。これも将棋の効果・効能の一つかもしれない。

将棋②(2021年1月)

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