多彩な「歩の手筋」に翻弄された中2の春
=井の中の蛙時代
中学2年の1学期だったと思う。学校から帰る方向が同じだった親友がいて、ある日突然、「近所に将棋の強いやつがいるから、やってみないか」という。次の日、さっそく「強いやつ」の家に案内された。待ち受けていたのは隣のクラスの目立たない男で、学校の成績は多分、中くらいだった。今でもそうだが、「将棋が強くなる子供は秀才」という通念がある。当時の私もそうだった。
ところが、対局が始まると彼は手つきもよく、あまり考えずに迷いなく駒を進める。私は定跡をほとんど知らなかったので必然的に乱戦になり、気が付けば王様がピンチなっていた。惨敗に納得がいかず、「もう一番」ということになったが、こちらの弱さを知った敵は、ますます調子に乗ってワンサイドゲーム。無残の2連敗をしては、さすがにやる気が失せた。
「そこで一念発起、将棋の勉強を真剣に開始…」となるのが自然な話の流れだが、そうはならない。私はその頃、父から囲碁を教わっていて、将棋どころではなかったのである。しばらくの間、私はこの悔しさを忘れていた。将棋で悔しい思いをするのは、それから4年後となる。
将棋③(2021年3月)
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