偶然が決めた大学の専攻。
目標を見失ったままの4年間…
しかし、高校生になるとさすがに「将来何になりたい?」などという質問は受けなくなる。その代わり「志望大学はどこか、何学部か」がよく問われた。地元では当時、唯一の進学校に入り、3年生のクラス替えになる前に迫られたのが、「理科系か文科系か」の選択である。数学が一番の得意科目だった私は、迷わず理科系を選んだが、どんな専門分野に進むかは考えてなかった。
3年生の秋に、朝の通学列車の中で数学の先生とばったり鉢合わせをし、志望学科の話になった。その先生に直接教わったことはないのだが、なぜか私のことを良く知っており、気にかけてくれた。その時、思わず「建築か工業デザインが面白そう」と口走ってしまったのだ。
すると、「数学のN先生の息子さんが工業デザイナーを目指している。話を聞けば参考になるので、手配してあげる」という。断る勇気がないので、つい「はい」と答えてしまう私…。
N先生の息子さんは同じ高校の2学年先輩で、「自分と同じ学科を目指している後輩」に感激のご様子…。実技試験の内容や対策を丁寧に教えてくれた。今さら、まだはっきりとは決めてないなどと言う空気はない。この日の1時間がのちの私の運命を決めてしまったのだ。
合格&入学後の喜び…。そして、不安と逃避
入試時の実技試験では、周囲を素早く見渡した限り、大半が私よりもレベルが低かった。しかし、当時の倍率は約8倍である。8人に一人の難関を乗り越えてきた人の大多数が、私より上であるのは自明の理である。
私は懸命になって同程度かそれ以下の人を探した。数人に一人くらいは見つかったが、落ちこぼれ仲間を探すのでは情けない限りである。「実技のダメな奴は、学科で点を稼いだのだ…」などと考えても、何の慰めにもならない。この絶望的なストレスから逃れるため、私は読書に没入した。そして、結果的には思いもしなかった分野で、3~4年後にそれが実を結ぶことになるのだが…。
仕事② (2020年10月)
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