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雑誌編集方針の転換、広告部との確執。
そして、得たものは…

 ディスプレイの仕事を辞め、雑誌編集の仕事をすることになったが、すぐには編集部の部屋に入れなかった。私を待っていたのは、雑誌とは無関係の校正のお手伝いと写真等の返却で、ほぼ「雑用」といってもよい。それでも、最初の会社で何の役にも立たない「図面のトレース」を1週間させられたことを思えば、「まあ、世間とはこんなものだろう」とのんびり構えていた。

月刊誌編集部から隔離されていた理由

 入社して2週間後、ようやく月刊誌編集部の部屋に入ることができた。そこで私は隣に座っていた先輩編集部員から、「すぐにはその部屋に入れてもらえなかった事情」を聞かされた。編集方針をめぐって会社と対立していた前編集長とその相棒を、私と接触させないためだったのだ。それだけを聞けば、一方的に「社長が悪い」と思ってしまうのは仕方がない。

 
 しかし、編集室に入り、初めて月刊「デザイン&インダストリー」のバックナンバーに目を通してから、私の見方は変わった。その雑誌で中心となっていたのは文明評論的な記事で、私が学んできたこととは程遠い内容である。少なくとも、工業デザインを目指す学生や、企業内の若手デザイナーの役に立つ雑誌ではない。このような「実用のひとかけらもない雑誌」を作らなくてもよいことに、安堵したことを覚えている。

 ようやく編集の仕事に企画からタッチできるようになり、私は胸を弾ませた。ベテラン不在が幸いして、未経験ながら専門知識を生かし、中心となって編集業務に邁進することができたのだ。

編集理念の対立は一時、解消されたが、
営業部(広告)との関係が…

 
 これは少部数雑誌の宿命かもしれないが、多くの雑誌は広告収入に依存している。そのため、営業担当者は記事に関連したジャンルの企業から、広告をいただいてくる。すると、「この企業、この商品に関連した記事を企画して欲しい」という要望が出てくるのは不思議ではない。

 さらに、広告のとりやすい内容の編集企画書を持ち込まれるようになると、編集部も「ふざけるな」という気持ちになるのは当然である。そして、編集と広告のバトルが始まる。

 追い打ちをかけたのは、社長自らの「ちょうちん持ち記事」の提案(押しつけ)である。様々な企業の新製品紹介コーナーを毎号、数ページ作れという。編集部は、デザインの発想や斬新性とは無関係な製品の紹介は難しいという旨を主張した。が、社長とは折り合いがつかず、とうとう編集部員3人はそろって退社することになった。今思えば、当時24歳の私は仕方ないとして、先輩社員や、親子ほどの年齢差がある編集長ともども、血の気の多い社員がそろったものである。

 その1か月後、私たちが手掛けた最後の号を書店で見かけたが、それ以降、月刊「デザイン&インダストリー」が見つかることは二度となかった。

 わずか数か月の編集経験だったが、私は、雑誌の特集記事の企画、執筆者探しと依頼・折衝、取材及び自らの執筆、依頼原稿の整理と校閲、ページレイアウト(割付)、表紙デザイン、校正を含む印刷進行管理、出張校正など、あらゆる編集関連業務を一通り経験することができ、出版界で生きる自信をつけた。また、グラフィックデザインの仕事を経験できたことも、次の仕事につながった。中小企業におけるクリエイティブ関係の人材難(当時)が、私には「大吉」と出たのだった。

仕事⑧ (2021年7月) 

 (つづきは後日)              仕事⑦へ戻る

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