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  名物教授を頼り、たった3分で決めた職種と会社

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3か月遅れの就職。仕事は何とか覚えたが…

 大学を卒業後、3か月遅れて社員約60名のディスプレイ会社に就職した。配属されたデザイン室は12名ほどで、そのうちの2人は私と同期(厳密にいえば3か月前に入社)だったが、すぐには馴染めなかった。

 もともと人見知りだった私は、小学校、中学校、高校、大学と、環境が変わるたびに苦労しながらも少しずつ克服してきたつもりだった。しかし、アルバイト経験は家庭教師とパン工場だけだったので、社会人としての基本が出来ていなかったのだ。社会人3か月と経験ゼロの差は大きかった。

 幸い、私の様子を見かねてか、5歳年上の係長が私を拾ってくれて、池袋の大手デパートの担当として一緒に仕事をすることになった。バーゲン会場の看板のレイアウトや色指定から始まって、季節ごとの各売り場の催し物やショーウインドなどの製作図面などを手伝っていく中で、仕事を覚えていった。何となくディスプレイ・デザイナーとして一人前になれそうな気がしてきたのだが…。それは大いなる錯覚だった。私には才能がないことに、まだ気づいてなかった。

大恩人の先輩が突然の退社。重荷だけを残して

 
 先輩のお手伝いをするようになってから、数か月経った頃だったろうか。夜遅くまで一緒に残業していた先輩が、急に弱音を吐き始めたのだ。直属の上司(役員兼部長)との折り合いが悪く、仕事に自信をなくしたという。私はただ彼の話を聞いてあげることしかできず、「僕は立体(のデザイン)よりも平面に向いている」の言葉を残して、1週間後に彼は退社してしまった。

 私はデパートの担当のままで、先輩の悩みの原因となった役員兼部長の直属として働くことになり、お得意様の宣伝課に出向社員用のデスクが用意された。部長の仕事のチェック・指導は厳しかったが、私は一人前になるチャンスと前向きに捉えた。しかし、キャリアがありプライドも高かったくだんの先輩は、心が折れてすっかり自信を失ってしまったのだろう。

 数か月後、彼と久々に会った時、グラフィックデザイナーに転職してチーフを任され、生き生きと働いている様子を聞き、安心した。

徹夜の残業が当たり前の業界

 
 私のほうは、実力以上の重荷を背負わされた上に、自分の書いた図面は施工時にも現場に張り付いていなければならず、重い荷物運びも手伝わされた。デパートの施工は徹夜が多く、時には開店(10時)の2時間前くらいまで長引くこともあった。食事の休憩時間を含めて、連続14時間の残業である。若かったとはいえ、肉体だけでなく精神的にも疲れが蓄積していく。

 そこで私は、残業に関する会社のある制度を利用した。それは残業を深夜にまたがって連続8時間以上した場合、8時間分を差し引いて代休1日分に振り替えられるというものである。多くの人は仕事の支障がない限り、やりくりをして代休を取った。

 しかし、徹夜の翌日または翌々日に代休が取れないときは、残業代をもらうほうを優先することもあった。現場の施工管理をする担当者の中には、代休が取りづらく、1か月に190時間以上も残業した猛者がいた。過労死などがニュースにならない時代のことである。

仕事⑤ (2021年2月) 

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